将棋界の大谷翔平

時期は正確に記憶していないのだが内容から判断して今年の春だろう。

 

2017年『shotgun』で第5回電王トーナメント初参加準優勝との活躍に始まり,翌年世界コンピュータ将棋選手権初参加優勝・新人賞,以後今日に至るまで上位入りとそこそこキープしている。

 

個人的には一番最初に試した静的な局面情報と深層学習のみでどこまで将棋が出来るか,次に試したノータイムでどこまでやれるかと言った辺りから始まって,予測手の統計的解析,探索部分の改善やライブラリの修正,スクラッチ開発を含めて多くのところに手を出している。学術的にはコンピュータ将棋の競技者で学術発表をしているものは稀有な中,手の内を毎年明かしながらコンペに出ると言う「種明かしをしながらの手品師」と呼ばれることもある。

加えて2020年から電竜戦を主催し大会運営を行い,技術的な意味での広報や競技者や視聴者を増やす活動も加わって,プレーヤーとして勝つことより優先している。

 

コンピュータ将棋界では古典的アルファベータ探索に基づく力技のアルゴリズムと比較的新しいモンテカルロ木探索に基づく深層強化学習のモデルが拮抗している。詳しくは以前記載しているし電竜戦以外のところでも数度話してあると思う。個人的には全て実験してみる方なので両方試してみたところ両方で頂点を極めることになった。

白ビール』と『二番絞り』の共存に関して

ある人に冗談として「コンピュータ将棋界の大谷翔平」と自称していいかと伝えたところ,返しが面白かった。「それならダルビッシュじゃないの」と。

ダルビッシュである理由は以下の通り,つまりWBCの時期だったと思われる。

1.WBC準備のキャンプに早々に入り若手に馴染む

2.トレーニング手法はもちろん変化球の握りなどの選手として秘匿した方が個人的利益となるような情報まで現役のうちに後進へ伝えている

3.以上の上でコンペ成績を残している

4.メディア向け活動より選手スタッフ向けの活動を優先している

 

あ~,この人私のファンじゃないかしらと思いましたよ。

冗談から始まったネタなので言った本人も覚えているかどうか分からないのだが,昨今の大谷翔平ニュースで思い出した。

 

ざっと思い出してみるとコードレベルで貢献があるのが,やねうら王,dlshogi,AobaZero,python-shogi,cshogiなど,口頭レベルでの修正提案などを含めると確かに多くのチームの底上げに貢献した気がする。コンペで勝つのが目的ではなく技術的な共有による全体の底上げが学者の本分と思うので特別なことをしているつもりはない。

集計が遅れているが先日の第4回電竜戦本戦はとても底上げ感が強くA級,B級はもちろんC級上位ですら人間を遥かに凌駕するレベルになっている。技術の普及・一般化とは恐ろしい速度である。

 

オチに使うと申し訳ないが同郷のメジャーリーガーは野茂である。

ーーー

野茂に関して:

プロ入りが衝撃的だったので地元の子供が多くサインをねだったそうで野茂自身がサインを書くことに慣れていないために断ることすら知らず物凄い数のサインボールが地元に溢れた。公園の砂場に野茂のサイン入りビニールボールが落ちているのを当時の帰省時に目撃している。(まぁ本物かどうか分からないが)