N150の件その2

前回に続く雑記である。

bleu48.hatenablog.com

 

N150を動かして気になる点があった。カタログスペックほどの性能を感じないのである。

Skylake級という話であったが、どうもおかしいので破棄していないSkylakeと比較することにした。i3 6100Uという2コア4スレッドであるが、体感でもこちらのSkylakeの方が速い印象である。

もしかしたらメモリ帯域というのが想像以上に効くのかもしれない。

 

ところで、N150(というかAlderLake-NとTwinLake)には Gaussian & Neural Acceleratorのv3が搭載されている。

インテル® プロセッサー N150

これは後にNPUに置き換えられるものであるが、当時は音声処理や画像処理などをCPUからオフロードするための行列演算機だったようだ。実際はほぼ稼働していないのではないだろうか。

GitHub - intel/gna: GNA - Gaussian & Neural Accelerator Library repository

Movidiusを買収し、VPU(Vision Processing Unit)をCPUパッケージに統合することで現行のNPUになっている。GNAは発展的解消をしたという扱いだろうか。

省電力モデルであるAlderLake-NやTwinLakeにはNPUが来てないのでGNAのままなのであろう。

考えてみるとこれらにNPUを搭載すれば激安Copilot+ PCとなって市場破壊可能であろう。

インテルによる自爆テロは考えてみると面白そうである。

 

妄想の範囲であるがAMDにノートPC市場シェアも取られてジリ貧になるならアリか。

利益率度外視になるが,自社ファブの稼働率上がるのは間違いない。

 

N150の件

前回N150機を仕入れたと書いた

ハードウェア統一戦に代わる構想 - 48's diary

 

例によって多忙で未開封だったわけだが順に開封していくことにする。

今更だがT2という機種らしい。

 
レビュー書いてくれカードがアルミフィルムに包まれているのが闇である

 

ミニPC界隈でFIREBATとは何か少し詳しいサイトがあったが、色々名前があってもFIREBATは無かった。

MinisforumやBeelinkといった中華ミニPCはどこが作っているのか|Tak

どうせIntelだけを信用して買っているので気にしない。

 

ねじも外さずSSDを確認できる。このタイプのミニPCのメモリはDDR4とDDR5があるらしいがこいつはDDR4だった。1枚刺しである。

よく見るとM.2もSATAである。

キラキラしているが樹脂にメッキである。

 

まぁこれが今Amazonで2万円しないのだから時代だな。

これで足りるならこれがコスパ良いというのは間違いない。

 

WindowsUpdateもマルチスレッドに対応してきたのか4コアがフル稼働である。

6Wで3.6GHz上限がCPU単体のカタログスペックであるが、どうもナチュラルにブーストされてそうな熱さだがクロックはむしろ下がっている。触ってみると熱いので熱律速かな。

 

ゆるゆる試していこうと思う。

 

ハードウェア統一戦に代わる構想

電竜戦として3年に渡ってハードウェア統一戦を行ってきた。

第3回世界将棋AI電竜戦ハードウェア統一戦

 

大会で優勝したものがハードウェアの力量なのかソフトウェアの力量なのか分からない部分を明らかにしようとする試みである。一定の役割を果たしたと考えている。

 

そもそもマニアックな競技のさらにマニアックな視点に注目したものであるので興行的に厳しいのは電王トーナメントなどと同じであろう。

考えてみたが電王トーナメントの機材も当時は20万円程度のPCなので50台あっても実は1000万円なので,電竜戦第3回ハードウェア統一戦の方が機材コストは大きかったりする。

 

で,開発者ベースで考えたところ中長期で,手に入りやすい手元のハードウェアで戦うのが適当と言う話を以前もしている。

先日AmazonでN150マシンが安かったので2台仕入れてみた。

今後はこのハードウェアでfloodgateを舞台に連戦を行おうと思う。

 

もし似たようなステージで遊んでみようとする方がいたら,N100やN95など含めた同系のものでfloodgateで戦いましょう。N150は僅かにパフォーマンスがいいと言う話もありますが微差でしょう。

 

 

 

 

長大定跡の話

やねうら王が巨大な定跡ファイルを配布するらしい。

大きいんだろうと思ってまだDLしていない。

 

 

3年ほど前に300万局面というものをチェックしたがあまり有意義なものではなかった。

今回は選手権でも有用に働いたとの噂があるので随分と改善されたものと思う。

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定跡ファイルに関しては電王トーナメントでも高評価頂いたように私なりに生成していたものがあるが、下記のような社会的影響を考えてうちでは公開しないことにしている。特に気が変わったりしていないが気が変わるかもしれないので永劫とは言わない。

Kristallweizenの件もあるので危険である。

うちの定跡はマルチポンダーシステムの稼働のために最初に考慮時間を使うのが相手側になって欲しいという理由で用意されたものなので精査レベルは相当甘いものと思っている。

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正直角換わりばかりになる一部のプロ棋士棋譜は面白みに欠けると素人目に思うし、それは立場を考えると仕方のない面もあるのだろうと理解はしている。ただ、本当に戦型確認程度しかみなくなった。力戦形だけ選んでみている。

 

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ちょっと見直してみると233万局面とある。3年前より小さいようである。

2019年段階でうちのが50万程度だから桁違いというほどでもないらしい。うちのはそこで打ち止めしているわけなので単純な比較にならないだろうが意外だ。

そもそもコンピュータ将棋界隈で定跡とは「事前に計算しておく」程度の意味である。

計算リソースがあるが改善のアイデアが無い状況では有効な手段だが、アイデアがあればそれを施すのが先だろう。大量に製作した後、技術的なブレイクスルーが見つかればほぼ全てゴミになるのが一番の欠点で金銭的にはもちろん精神的にきつい。

やねうら王としては月額課金の支援者を集めているので、そちら向きのリターンとして用意されているのだろうが無理のない範囲でと祈る限りである。

 

最大までリソースをつぎ込んだ参加者はやめていかれることが多いのよね。

PコアEコアの話2025

元ネタは2022年のハードウェア統一戦にはじまる。

 

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可能ならRyzenの16コアをとサードウェーブには要望していたのだがインテル社がスポンサーになる関係でAlder Lakeで対戦することになった。

当時ハイエンドの12900Kである。

 

各自のソフトウェアを対応頂くのに実機を持っていない人向けに複数段階の情報開示度を設置し多くのベンチマーク情報を提供した。特にヘテロジニアスマルチコア未経験者にとっては対応は難しいであろうとの想定で先行提供しておいた。

結果的にはあまり参照されていない感じで実機を持っている人だけがチューニングに成功していた雰囲気があった。

 

同ハードウェア対応にはWindows11が不可欠とされた。現在では相当別物になっているということに最近気づくこととなった。

というのはAobaZero支援で投入しておいたものが全く性能が出ていなかったのである。

www.yss-aya.com

 

これは先月か今月からであるが、長時間投入したプロセスが全処理Eコア側に振られている。これでは全くGPUの性能を生かせていない。

今後他のプロセスも同様のオフロードが行われるのか実験してみないといけないが、手元にはそれほどインテル社のマシンがないので気にしない方がいいかもしれない。

ただ、これから機械学習目的で構成を考える人がいたら気を付けた方がいいかもしれない。

 

ついでに少し書いておくと既に一部公表済みであるが、電竜戦のハードウェア統一戦は一旦リセットしようということになっている。運営側の負荷が大きいこととそれに見合うものが今後得られるかどうか曖昧である点が挙げられる。スポンサー絡みも理由のひとつでもある。

世界選手権の間、この話題であちこちに尋ねてみたところラズパイやN100くらいの安価なハードウェアを各自用意して中長期的にレート争いするくらいが開発者的には喜ばれるイベントになるのではないかという話であった。もっと簡単にするなら各自ハードウェアスペックを詐称せずFloodgateに投入するくらいの紳士協定ルールで十分に思われる。興行的なものは当面度外視でいいだろう。

 

 

 

 

 

 

詰将棋2025

簡単な詰将棋はやる方だが難しいのはとても無理だ。

次の一手なら適当でも結構当たるが,詰将棋は少しのミスも許されないので甘くない。

 

コンピュータにとっては詰将棋の方が簡単で本格的な指し将棋より詰将棋の方が先に実装されている。1960年代の話である。

1997年に脊尾詰が1525手のミクロコスモスを解いて一段落とされている。

 

しかしながら,最長手数のミクロコスモスよりも難解なものがあることが知られており,下記サイトでは著名な幾つかが紹介されている。

コンピュータ向け超難解詰将棋作品集: 詰将棋メモ

 

岡村孝雄作の「驚愕の曠野」が筆頭にあがっているが,コンピュータにとって何が難しいかと言うと手の広さである。裸玉に対して持ち駒が大駒含め多種であるため初手すら安易に定まらない。

コンピュータによる回答時間も他のものが最短4桁秒であるのに対してこれだけ5桁秒である。うちのノートPCでも8時間弱要した。

 

そう,8時間弱なので同サイトの他のものより若干早い。

使ってみた詰将棋エンジンは以下のものである。

github.com

 

他にも上記サイトの「木星の旅」や「FAIRWAY」なども解かせてみたが更に数倍の大差で早いようである。

KomoringHeightsも登場時話題になったがどうやらそれを上回りそうな性能である。

github.com

 

shtsumeの面白いのは世間でCと呼んでも大概C++な昨今でPureなCで実装されている点である。詰将棋エンジンの大きな肝となる部分はメモリ管理であるため古典的なCでの実装は苦痛ではないかと思われるが独自のGCをスクラッチ実装されている模様である。

 

このような問題はもはやコンペやベンチマークの領域であるので一般的な詰将棋とは相当剥離した世界である。冒頭に脊尾詰を挙げたが現時点では32ビットエンジンで公開されているため利用できるメモリ量が少ないため極端な難問に対してはどうしても弱くなってしまう。

 

また,マニアックな話で「攻方打歩詰誘致」というトラップには引っかかるエンジンが多いとの指摘もある。攻め方の打歩詰は詰将棋エンジンでは考慮されていないことが多いようであるが,柿木将棋だけはさすがと言える。

 

 

詰将棋界隈も決定版と言われつつ,まだまだ終わっていないようである。

うちの詰将棋エンジンも欠点を知りつつ数年放置している状況なので暇を見つけて改良したいものである。

AI PCの話(2025春)

以前GPU搭載の機械学習目的のノートPCについて書いたが結構なアクセス数がある。

機械学習向けのノートPCの話 - 48's diary

電力制限などの話題が珍しいのかもしれない。デスクトップと違って気軽に買い替えできないのでしっかり選んで頂きたい。

 

今回の話題はマイクロソフト社の定義したCopilot+ PCに関する話。

www.microsoft.com

まぁ,こういうのは流行らせようというのが目的で実際に流行る流行らないは五分五分である。MS社主導の割にソフトウェア対応が遅れて現状微妙なところ。

もちろん,本Copilot+ PCの定義で最も重要なところは40TOPS以上のNPUだろう。GPU搭載機はパフォーマンスで上回っていても対応機とされないらしい。この辺がビジネスだ。

 

で,当初対応が早かったハードウェアメーカがQualcommで,Snapdragon X Eliteシリーズとして相当頑張ったモデルを出してきたが価格帯が高過ぎた。絶対的パフォーマンスを誇れない後発,かつアピールするソフトウェアが出遅れたためコストパフォーマンスのアピールも難しかった。

現在では下位モデルのSnapdragon X Plusに低コスト版(8コア版)を投入すると共に対応ソフトウェアの拡大で面白い立ち位置になってきている。

昨日バージョンアップしたONNX Runtime v1.22がリリースされたがQualcomm対応が相当進んでいる上にライトユーザにも有難いPython用のバイナリも即リリースされている。

https://pypi.org/project/onnxruntime-openvino/

 

次点がインテルAMDか難しいところだが,AMDを推しておこう。

AMDのNPU搭載機はAPUのみである。7000番台,8000番台に続きRyzen AI 300番台である。40TOPSの条件を満たすのはRyzen AI 300番台以降となるがこれもQualcomm同様頑張り過ぎた規格であるため高価格となっている。

先月くらいからKrackan PointというRyzen AI 300番台の低コスト版(Ryzen AI 5 340およびRyzen AI 7 350)が市場投入されてきており,こちらもQualcomm同様シェア拡大に繋がりそうな気配である。特にAMDの場合はx64アーキテクチャのためQualcommより買い易い雰囲気がある。

 

最後にインテルであるが,対応しているのはLunar Lakeのみである。もちろん,インテルも頑張った仕様になっているため同製品は高コスト品で値下げは困難であろう。

チップレット構成で製造されるLunar Lakeは低価格化が困難となっておりビジネス的な意味で後継が途絶えそうな雰囲気である。インテルの他CPUは40TOPSを満たしていないためCopilot+ PCが流行らないとも言えるほど足を引っ張っている状況である。

インテルの普及帯CPUの対応を期待しているのはMS社だけではないだろう。

 

おまけでApple社のMシリーズを並べておく。Armコアへ移行したMacシリーズは当初から全てNPUを搭載している。また,若干ソフトウェア対応が遅かったが現在同仕様のハードウェアが搭載されていることもありMS社よりもソフトウェア対応が容易な状況である。機械学習系の対応も進みつつあるためCopilot+ PCに対してLLM分野などでは半歩程度リードしているとの見方もある。もちろん欠点はシェアとスケーラビリティであろう。

 

と,休日のコーヒータイムにつらつらと書いていたが,結局インテル頑張って欲しいとの思いが強くなった。NPUに限らず,CPUもGPUもLANもSSDも全方面しっかりして頂きたい。