2021年9月15日に日本将棋連盟からアナウンスがありました。
公式戦の中継アプリに勝率表示を行うとのことです。
「将棋連盟LIVE中継」Android版(V7.12)アップデートのお知らせ (段階的にリリースとなります。)
— 日本将棋連盟モバイル【将棋連盟ライブ中継】 (@shogi_mobile) 2021年9月15日
◆AIによる勝率表示機能を試験的に追加しました。
・AIによる先手勝率を見られる対局に、PCマークが付きます。
・観戦画面に勝率を表示します。
今まで,ニコ生やABEMAやNHKで評価値放送はありましたがこれらは全て報道メディア側の発信情報として行われておりました。
日本将棋連盟モバイルの場合は試験的とはいえ日本将棋連盟公式の発信です。しかもリアルタイムですね。
選ばれたのは白ビールとのことでした。
世界コンピュータ将棋選手権ではHefeweizen,Kristallweizenなどとしてエントリーしている一群で広く白ビールと呼称されています。
GitHub - Tama4649/Kristallweizen: 第29回世界コンピュータ将棋選手権 準優勝のKristallweizenです。
公開は2年以上前ですが,我々の計測範囲では十分深く探索する条件で2021年10月現在尚トップレベルの評価関数であると確認しています。
また,AobaZeroプロジェクト等の学術的な実験プロジェクトなどにおいても対戦相手として選定されるほどには信頼されているようです。
恐らく日本将棋連盟側もその点考慮されたものと考えています。
試験的な運用とのことですので今後差し替え等があるかもしれません。
私個人が懸念している材料はたとえば前述のこの記事でも記載しましたが,コンピュータ将棋棋戦は27点法の宣言法ですが,プロ棋戦は24点法です。
その点は強化学習時に大きく影響がありますので,宣言勝ちの可能性大として勝率を高く評価した場合でもプロ棋戦のルールでは持将棋となるケースもあるかもしれません。
もちろん,具体的な対応依頼があれば対応していきたいと思います。
とりえあえずは試験期間として公式リリースの評価をカジュアルに御堪能下さい。
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追記:
システム担当者に確認しました。
評価値計算に用いられている計算機はAWSのT3aインスタンスの8スレッドとのことでこれより速いマシンを持っている人は手元で計算した方が良いかもしれません。
また,勝率への換算式で用いられた定数は1200だそうで,結構マイルドです。
もちろん,試験運用でもありこれは現状の値で予告なく変更の可能性はあるようです。
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追記2:
AI評価普及期の話を聞いたことがあります。
elmoが2017年に公開されて一部のマニアや奨励会員などが導入していたのが早期導入組だそうです。その後過渡期があり,2019年からKristallweizenが多く使われていたと聞きます。
特に棋士間や将棋教室内でUSBメモリに入れたものを巡回されたり,知人に入れてもらったりといったケースが多く,使用している本人もソフト名やバージョン番号を知らないことも珍しくないそうで,プロ棋士でも実際にわからないと答える方も多くいました。意外にネットに繋がっていないPCが多いのですね。
特に千田先生はKrsitallweizenを多くインストールしてきたそうですが,そういえば説明してないとか仰ってまして(笑)
また,読みづらいとのことでその後,俗称の「白ビール」を容認するようにしました。
ということで,今回連盟モバイルに用いられる以前から馴染んでいるようですので一部界隈ではニュース性は無いと認識されているのかもしれません。
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追記3:
毎日新聞は第80期の名人戦から,朝日新聞は第81期の順位戦からYouTubeで白ビールの評価値を利用して中継しております。メモリ量や設定値,マシンパワーなどで若干差が出るのですが見比べて私にコメント頂いてもそれぞれの設定値などは分かりませんので悪しからず。