以上に参加者としての私視点のページは書きましたが,会期中に余裕がなく他のチームの動向は見ておりませんでした。特に上位を占めた強豪の動向を中心に簡単にまとめてみました。
1.中国勢のレベルが違う
中国からの参加チームは4チームでしたが,全てAリーグ進出。決勝では1位2位4位5位と上位独占と言っていい状況でした。3位がKataGoなのですがUEC杯でこの順位なのかと驚愕です。KataGoはオープンソースで開発されているので良い練習ターゲットになっているのでしょう。
特に最終戦のKataGo vs RankaGoではRankaGoの半目勝ちを双方認識しており,判定でやきもきしていたのは人間だけだったとの辺りがAIのコンペらしい展開でした。
Bリーグで目数読み違ってたのとは大違いです。
2.世代が違う
私はおっさんですが,他のチームは比較的若い人だそうです。また,技術的にもAlphaGoのコピーから完全に一線を越えているようで追い付くだけで息切れしているようでは歯が立ちません。
優勝のVisionGoおよび6位のKohadaではInceptionモデルが使われており,またVisionGoは探索時の枝刈りを行っているとのことでした。
汎用技術を売りにしたAlphaZeroとは異なり専用のものとして改良が施されているようです。将棋で身に着けた技術利用だけで突貫工事した私が全く勝ち目ないわけです。
3.棋力が違う
2位に入ったRankaGoの開発者はプロのチェスプレイヤーだそうです。KataGoのWuさんも囲碁の高段者ではないかと懇親会で話がありました。中国勢は当然のようにチーム内に上級者がいるものと思われます。
見えている世界が違うんだろうなぁと思います。私がたまたま将棋で成功を修めたのもなんとなく盤面が読める棋譜に親しみがあるなどのアドバンテージが大きかったと再認識しました。正直大会中盤面見ても何もわからず,特に自分の対局が早めに終わるとうとうとすることが多かったです。興味・好奇心は不可欠ですね。
4.恐らくマシンパワーが違う
うちはRTX3090を2枚用いました。Bリーグでは演算力で勝っていたように感じます。特に囲碁知識がないので軽量な局面評価を暴力的な探索で補う策で準備していました。日本ルール実装の甘いチームなどを終盤で崩せたらいいなあ程度の妄想でしょうか。
KataGoや中国勢はクラウドを使っていたようですので恐らく8GPUなどのインスタンスでしょうか。意気込みも違いますね。
この辺は公平にするとまではしなくてもスペック公表義務くらいあっても良い気がします。
5.組織力が違う
懇親会で話題になった点ですが,日本では研究組織レベルで取り組んでいるチームが皆無です。今回も私含め個人参加が多かったように思います。
しかしながら,今大会に限らず開発規模を考えると多人数で分担し組織的な開発が上位を争うには不可欠と思われます。特に探索部の改良と深層学習モデルの改良を一人で行うのは技術・知識・労力すべての面で酷です。加えて資金力でしょうか。
とは言っても私自身「どこかのチームに加えてくれないか?」と打診しても断られることが多いので,この分野の人達は皆一匹狼気質なのかもしれません。
組織的に開発が行われていない弊害としてサーバの安定性やドキュメントの不整備などが結果として出てきます。電竜戦サーバの例を挙げるまでもなく将棋の方がずっと進んでいることは言うまでもありません。
勝敗判定の公式オープンソース実装がない状態で強化学習の練習対象にするのは非常に困難だと何度も書いておきます。
以上,突貫工事で参加した大会の雑感でした。
個人的には2年ほど前にGo言語の習作で作ったプログラムをきふわらべ化されたのがきっかけですが,結局PythonとC++で(他のソフトのルーチンを流用しながら)組むことになりました。シチョウや目算ミス含めて致命的な不具合が相当ありそうなので今後の課題とさせて頂きます。
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3/28追記:
某所で日本勢3位とコメント頂きました。
そう言われればそうなんですね。
順位気にするところまで考えてません。とりあえず短期開発にしてもシチョウ対応なしは酷かったと反省しております。