高校の頃,F1ブームってのが来てた。
ブラジルの英雄アイルトン・セナがホンダエンジンを駆って最速を誇ってた。
もうひとつは日本人初のフル参戦ドライバー,中嶋悟の存在だ。
彼のエピソードには雨の峠道をドラム缶積んだトラックで攻める練習だとかF1ドライバーにカップ焼きそばを流行させたなど多くのものがあるが,私が一番好きなのは
彼が学生時代に同級生と自転車レースをして負けた翌日にバイクに乗ってきたという話である。
あー,負けず嫌いも相当あるんだがモータースポーツ向けなんだなぁと思わせるエピソードである。
彼を知ったのはF1以降なので,それまでどういう苦労をされたのか知らないが最年長F1デビューを支えたのは好景気の日本企業であることは言うまでもない。つまり,彼が日本人でなければ苦労無く早々にデビューしたかもしれないし,時代背景が無ければデビューの機会がなかったかもしれない。そういうことだ。
速いマシンに乗るためなら何でもする。本当に何でもした。彼を支えたセイコーエプソンのテレビCM用に歌も歌った。
この「悲しき水中翼船」が私がはじめて買ったCDである。(その前はテープだし)
レーシングドライバーは速く走るだけが仕事じゃないんだ。スポンサーを集めるのはレーシングドライバーの能力だよ。F1で走るには桁違いの金がいるんだがそれを用意した。
黄色いロータスホンダのペア(セナ・中嶋)は中嶋が稼いだ金でセナがポイントを取るシステムだとまで言われた。
翌年移籍したセナがワールドチャンピオンになったのだから見事な踏み台になったわけである。
まぁ,そういうのを見てた。大学生になってもサークルの先輩が草加ゼミだと言う口実だけでゼミ合宿まで参加してた。若い奥様も参加されるスキー合宿でマイクロバスをドリフトされるところはさすがラリードライバー。
泥酔してた草加先生が「僕わ見合いなんだよぉ・・君も見合いしないか」と御提案頂いたのを覚えている。お受けしてたら資産家の婿養子だったんだろうかw
F1用のアクティブサスペンションの共同研究期間が終わったという理由で配属希望を外したが,貴重な体験をさせて頂いた。
いあ,話がそれた。
今回のアレは個人的にモータースポーツだと思ってる。走り出したらメカニックの仕事はない。走る前にすべての準備をするのが仕事の大半だ。
入手可能な「速いエンジン」があれば多少無茶をしても載せる。新参プライベーターに仁義はない。ワークス勢は他社エンジンは使えないだろうがね。
何か他チームに差をつける可能性のあるものは試してみる。失敗が9割を超えるのは当然だ。徒労とか気にしない。
細かい空力パーツひとつの改造でも手を抜かず慎重に行う。全てのバランスをレース前まで煮詰める。信頼性の検証は航空宇宙分野並みだ。
不安要素を抱えたままだと胃がキリキリする。
(未だ少々興奮気味で寝れないおっさん)