将棋とチェスの違い(Stockfishを参考に探索部を強化する際の注意点)

以前も少し書いたけど,将棋は終始40枚の駒を使うがチェスは駒が減る。

また,将棋は歩や桂馬などの自由度の低い駒が多い上,長距離移動可能な駒が少ない。チェスにおいてはルーク2枚,ビショップ2枚,クイーンと大きく動ける駒が多い。

これにより探索難易度のピークがかなり異なる。

 

例えば駒を取り合う行為は将棋では両方の駒台に駒が乗ることになるので,攻守共に自由度が増す。探索の枝が増えるということだ。チェスでは序盤クイーンなどの行先を止めているポーンなどでない限り駒が減るために自由度は下がる。選択枝が減る。

 

駒が減ったチェスは非常に単純なゲームに成り下がり多く引き分けとなるが,将棋では複数種の駒が互いの駒台に乗った状態が最も探索速度の落ちる難局面となる。あまりに多く持ち駒がある場合は長手数の即詰みがあったりして大変だ。

 

効きである。どちらも駒をひとつずつ動かすゲームであるため,多くの駒は動かない状態で活躍する。つまり効きの効果である。上記の通り将棋では自由度の低い駒が多いがチェスでは間に駒が無い限り長距離の効きがある駒が多い。この差は大きいが更に持ち駒の影響が出る。将棋では長距離の効きに対して駒を打って対応することが可能であるため長距離の効きを比較的高頻度で遮断可能となる。つまり,持ち駒が成否を決する。逆に考えると歩がない時の香車,飛車は普段にも増して恐ろしい。

 

次にPromotion(将棋では成り)である。

チェスではポーンのみが成れる。そしてほぼ最強のクイーンとなるのが通例だ。将棋では王将,金将以外の駒は全て成れる。

 

問題はそれぞれの価値である。チェスにおいてポーンが成るのは最終列においてであるが,将棋と異なり打ち駒がないため初期配置のポーンが最終列まで進む必要がある。実に大変である。そしてこの行為は一局に一度も起こらない程度の事象であり,そして中盤以降でクイーンが一枚増えるということは多く勝負を決する要因となる。チェスにおけるPromotion(成り)とはそういう稀有なものである。

比べて,将棋において成り駒が無い将棋の方が珍しいであろう。敵陣3段で成りが可能なのはもちろん,敵陣に駒を打ち込むことが可能なため高頻度で成りが行われる。そしてコンピュータ将棋で計算される駒の価値が上がる行為であることは違いないが,銀が成銀になる際などはあまり価値があがる行為ではないとされておりその行為の価値は一定ではない。

これでStockfishにおけるPromotionをそのまま将棋に取り込んでは不適当なことが理解されると思う。

 

で,その辺弄ってみた落ちを引用して雑記を終える。