共存共栄の話

この辺の話は触れないでおこうと思っていたのですが,どうやらそうもいかないようなので界隈の代表する立場として一度だけさらっと触れておきます。

 

コンピュータ将棋界隈だと私の前の世界チャンピオンがelmoなのですが,開発者側では技術的後継はウチ含め多く出ていますが,将棋指しでelmoをそのまま使う人は極稀でした。elmo囲いというのが話題になりましたが,非常に浅い探索の場合に出てくる囲いでじっくり探索させるとよい評価がでるものでもありません。探索を指せる云々ではなく棋譜をみて参考にするといったものでした。

 

再三ネタにするのもお恥ずかしいですが,Kristallweizen公開後コロナ禍の影響もあるのか知らない間にプロ棋士や中継記者,アマチュアの将棋教室はじめ広く拡散されていたようです。後程になって聞きかじると「よく分からないけどコピーして貰った」などのコメントが多くあり,GPLライセンスとか言っても無駄なんだろうなぁと言う雰囲気でした。USBメモリで他のソフトと抱き合わせで回覧されていたケースも多いようで,あまり触れたくない理由はここにもあります。

 

気が付くと当然のように広く大勢の方々が使っていた状況です。

詳しくは他にも書いてあるので省略します。

 

で,その後衝撃的だったのは日本将棋連盟の要職に居られる方が「AIとの共存共栄が非常にうまくいっている」,「AI開発者は好意的に無償提供してくれている」と各方面で強調しておられた件でした。Web記事や雑誌など複数掲載があります。

 

Bonanzaが無償公開された際にもビジネスで将棋関連のソフトウェア開発されていた方々で相当揉めたと聞きます。ビジネスとして成立しなくなった話など聞いたことがあり,具体的に将棋関連ソフトのパッケージは売れなくなっているようでした。

 

私自身も一般将棋指しやプロのビジネスに貢献するつもりではなく,ソフトウェア開発者の一助となるべく公開したものです。プロがビジネスで使うならそれなりに対応すべきだとコメントしたことがありますが黙殺されております。私個人もボランティアサポートには限界があるとお伝えしてあります。

 

その後,どうなったか詳しい方は御存じと思いますが,オープンソース開発を進めていたやねうら王やdlshogiは有償提供となりました。

日本将棋連盟モバイルで次に採用されたたぬきさんのモデルも有償提供です。

元々ビジネスで将棋を扱われているHEROZさんは別にしても上記経緯に反発しての行動である旨伺っております。他にも公開していたものを非公開にした話なども聞きます。

コンピューター将棋思考エンジン 『お前、 CSA 会員にならねーか?』 (tanuki- 第 34 回世界コンピュータ将棋選手権バージョン) - れっさーたぬき - BOOTH

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棋神アナリティクス

 

正直言ってあまり気持ちの良い状況とは言えません。

特にコンペの賞金も意識しない方なので目先の金が欲しいというのでもないのですが,営利ビジネスの方が実費程度の負担もする気が無いと明言されるとさすがになと言う感じですね。(「お願いします。只で」のような似たような話は本件だけでもなくあります)

 

私個人は争う気も無いので技術的なものをオープンでやりとりをする雰囲気を重視して今後もコンピュータ将棋協会や電竜戦と関わっていくつもりです。

日本将棋連盟様の東西の将棋会館の新設にも末端の一ファンとして少し寄付させて頂いています。

 

少し共存共栄の意味について考えませんか?

 

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おまけ

第53回GI研究発表会-情報処理学会

9月6日に広島工業大学でゲーム情報学研究会があります。2年ぶりに電竜戦のまとめをお話しすることになっていますが今後の話もさせて頂こうかと思います。