昔話(MP3エンコード編)

その昔,MS-DOSからシリアルポート経由でモデムを通じ,一般のアナログ電話回線を用いることで通信を行っていた時代があった。
PCの画面とは黒く分厚いブラウン管に浮かび上がる白く固定サイズの25行の文字列である。
ネットワークのコミュニケーションはホストと言われるマシンに電話回線で接続することにより行われていたが,主流であったホストは時間課金制または短時間無料といったものであった。

 
その中で私はMPEGと言うものを知った。
DVDで使われるMPEG2でもハンディビデオで主流のMPEG4でもなくその前の規格である。(うろ覚えだが流行らなかったフォーマットのVideoCDだっけ?)
オーディオ部分を取り出すことでMP3と言うのがその数年後流行るが,当時のi486ではリアルタイム再生は困難であった。
そこで私はMP2を主流に扱うことにした。手持ちのハードウェアでリアルタイム再生が可能であったからである。
音質はAMラジオが上手にチューニングされた程度といったところである。
これでもエンコードにはリアルタイムの10倍程度の時間を要した。
3分強の歌謡曲は1MB強のファイルへ変貌し,辛うじて一枚のフロッピーディスクに収容することが出来た。

 

その数年後,比較的普及したレベルのPCでMP3がリアルタイム再生可能となる。
また,専用のデコーダハードウェアが開発され安価な再生機が量産された。
当時でもエンコードにはリアルタイムより数倍長い程度の時間を要しており,世間のPCの多くの時間を費やした。
エンコードベンチマークサイトでは様々な条件でその速度を競っており,私も身近なものを使い一度だけトップランクを記録したことがある。
しかしながら,不正扱いとしてすぐに削除された。理由は分からないが当時のハンドルネームに実績がなかったからであろう。
すぐに午後のコーダと言う優秀なエンコーダがトップを取り自分も争わずそれを使うことになった。
SIMD演算との出会いであり敗北である。

 

近い時期にスパコンFFTを実装するコンペがあったのでエントリーしたことがある。邪悪であるが本題以外で様々なベンチマークを計測するのが主目的であったので結局下から2,3番くらいで敗退した気がする。トップは専門分野の大学院生でそれを修正したものが実際のスパコン用のライブラリに採用されるらしいとの話を後に聞いた。こういうのも良い経験である。出来れば表彰の場に行きたかったが当時情報系の学会とは何の縁もなかった。

 

随分前に下書きしたものだがちょっとした切っ掛けで思い出したので加筆して晒す。

当時動画系はライセンスがうるさくて自作ソフトも捨てハンドルネームで流通させた気がするがあまりに古くて覚えていない。誰かが記録を取っていれば思い出すかも。