学生時代のアルバイトの思い出

もう20年以上前の話になる。

30年前に近いネタもある。

学生時代はそれなりに貧乏学生のつもりでいた。程度は未だによく分からない。

大学入学時に同級生に上から下まで幅広くいたので自分はまぁ普通の方かという認識であった。学食が高いのでハムエッグを食パンで挟んで持参する程度の貧乏学生である。

 

アルバイトも色々やったが基本的に本業を疎かにしては元も子もないわけで,結局短期しかやらなかった。特に人力飛行機制作を始めてからはまとまった空き時間は作業をしたいのでバイトは短期で即金が基本となった。

工事現場の旗振りなどは即日で仕事を入れてくれるので助かるが,たまに事故で時間が延長されて災難もあった。深夜の国道作業のはずが結局通勤時間までになってトラックやバスの運転手,バス停のサラリーマンや高校生に酷いことを言われたのも経験のひとつだろう。

 

あるときネットでプログラマの短期募集があった。即金可だったので応募したが,実のところ情報系学生でもないのでほぼ独学で学んだ知識だけで対応可能か半信半疑で面接に挑んだ。HDDが平積みされるような現場で色々とソフトもハードも触らせて貰ったがアレがテストだったのだろう。時給千円程度の募集だったが一週間もせず二千円級で新規プロジェクトの先行調査メンバーに押し込まれた。(当時詳しくなかったが所謂ITベンチャーの類である)

 

結局そのプロジェクト自体は長居しなかったのでよく分からないが,知り合いができたのかちょくちょくお呼びがかかるようになった。知らない会社の社長から呼ばれて面接に行ったらそのまま朝まで飲んでいたこともある。話題は社運を賭けた事業の話だったが私は只酒が嬉しくて適当に妄想をよいしょしてただけだったかもしれない。上場企業の部長級やIT社長からよく連絡を受けたが,どんな紹介をされたのか皆前金を現金で渡してくれたのでゴルゴ13ごっこ的な遊びだったのかもしれない。無計画な新規事業や破綻したプロジェクトが大半だったのでドライに捨てることは多かったが丁寧に状況説明したためか恨み節は特になかった。私がダメと言ったらダメだという信頼があったんだろうか。炎上プロジェクトの文字通りクローザーを務めることが多かったが,人間関係が希薄なので心理負担は特になかった。破綻スレスレで私が短期で体裁だけ作ったものの幾つかは現在業界を代表するようなものになっているのが結構面白い。

 

茶店に呼び出されて知らないおじさん(概ねIT社長)と小一時間会話するだけで2,3万円貰って帰るようなことも多く,今風なら援助交際なんだろうか。週末の証券会社でLANケーブルを通したり,冷蔵倉庫のシーケンサを置き換えたりなど手作業もあったが個人的にはそういった方が好きだった。

 

見積りやメンバー集めを依頼されたこともある。バイトを優先する気がさらさらないので仕事を断るつもりで自分の単価をどんどん上げていった。依頼のあった仕事の大半は適当に分割して他の知り合いに投げたが,社会人になって考えれば手数料無しのブローカーだったわけで,依頼が多く来るわけだ。なんとなく自分の単価は時給一万円で上限にしていた。学生が日当10万円は取り過ぎとの判断であったがそれが理由で断られた件はなかった。

 

そんな調子なので週末労働だけで月収が並のサラリーマン級になった月もあった。大学の知人は多く中退するんだろうと噂していたそうであるが,私は一応学業優先の姿勢を変えたことは無いつもりである。むしろ研究室のソフトウェア技術の底上げに相当貢献したと思う。結局留年もなくストレートで学位も取った。

優秀な人が多い環境に恵まれたことも含め色々と運がよかったのだろう。

 

悪い点があるとすれば仕事に自分の名前を残すことに無頓着になったことと,サラリーマン研究者にも関わらずプロジェクトの問題点を指摘して仕事を断る癖がついたことだろうか。