電竜戦と言う大会を昨年から主催しております。
私も電王トーナメントは第5回しか参加していないので,新参の類と認識していたのですがどうやら私くらいの立場の方が公平性を保てるという雰囲気のようなので運営に協力しております。
春の世界選手権に対して秋の電王トーナメントと言う年2大会体制がコンピュータ将棋業界に非常に良い効果をもたらしており,年あたりの強化速度が2倍程度に向上したと言う実績があります。電王トーナメントが終了した後もこのペースを維持するのが電竜戦の務めということです。
しかしながら,全く同じ運用をしたのでは面白みがない,役割として薄いということもあり,独自のルールや大会運営を模索している段階です。練習対局を公開で行っているのも衆目を集め多くの意見を集約しようとする姿勢によるものです。また,開発者のモチベーションの維持の点から理事長は賞金に拘りがあり,資金運用の点からも法人化が適しているとしてNPO法人登録を本年度行いました。今後はさらに公益法人化を目指して居ります。
で,基本的には秋の電竜戦がメインイベントです。昨年末および先月行ったTSECというのはチェスのTCECを模倣した余興の類と考えて頂ければと思っています。もちろん,同一局面から多くのエンジンで対局を行うのは局面評価の点から非常に有用であることは当然でありますが,勝負事として公平性が高いというわけでもありません。対局数も非常に多く余興とされる意味は御理解頂けると思います。
また,公益法人化への布石でもありますが普及活動の一環として先月のTSECの前座として簡単な記念講演を行いました。
ここで,深層学習モデルの歴史を簡単に触れたのですが,伝わっていない部分を補足しております。
dlshogiのデビューは第5回電王トーナメント(2017年秋)です。
鵺(NNUE)は同大会エントリーしていましたがキャンセルしています。
リンク切れしていますが,アピール文のファイルは残っているようです。
https://denou.jp/tournament2017/img/pr/nue.pdf
そして,NNUEの大会デビューは第28回世界選手権(2018年春)で,大会中にGithubに公開されました。大会中にダウンロードして遊んだ記憶があります。
微妙な問題ですがNNUEの方が歴史的には若干新しいものとなります。
NNUEをディープラーニングに加えない人もいるようですが,インテル社が推しているようにCPUの拡張命令を使うことでCPU内で高速な推論を行う手法は以前より確立されています。NNUEは将棋に特化し第一層の入力を差分化高速化したところに一番の特徴があります。(引用文献にしやすいようにして欲しいくらいですが)
インテル社ももちろんこちらの技術に近いAIチップも多く開発されています。
ということでNNUEの方が実は新しいディープラーニング技術だと言うことができます。
もちろんdlshogiのみならずPALや二番絞りも様々な進化をしておりますが,いずれも深層学習の範疇です。
8/15(日)に「従来型将棋AI VS ディープラーニング型将棋AI」という興味深い企画があるようです。
— 森内俊之の森内チャンネル (@moriuchi_ch) 2021年8月11日
渡辺名人がブログで、将棋AIについて解説した「森内チャンネル」♯106をご紹介下さいました。イベント前にご覧いただければ幸いです。
(森内俊之)
告知など。 - 渡辺明ブログ https://t.co/jwnI0yob7r
永世名人の仰る「従来型」って何のことだろうと思ったので書き下ろしておきました。
私が見る限り双方最新型の深層学習ですし,現在最強に近いハードウェアを投入していることもこの両者の大きな特徴です。あえて言うなら上記資料にある通りαβ型とMCTS型と呼称するのが適当でしょう。
ということで8月15日夕刻は以下のチャンネルでお楽しみください。
運営は素人ですがレアな話が聞けると思います。
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追記:講演部分を切り出されたとのことでリンク置いておきます。
小一時間ありますが数式も無く観戦時の参考になるような歴史的な話ですので気楽に見てやって下さい。